健康コラム COLUMN

見落とされた癌 著:竹原慎二

2019年2月7日

竹原慎二さんをご存知でしょうか? ボクシングの元ミドル級世界王者です。

網膜剥離で現役を引退されてからは、よくテレビ番組にも出て人気者だった 竹原さんですが、最近本を出されました。

 

今から数年前から現在までのことを書かれた『見落とされた癌』 という題。そうなんです。

竹原さんは癌を 患っておられました。

2013年1月から頻尿が気になり、知り合いのお医者さんA病院で調べてもらうと異常なし。

その後も、あまりにも頻尿の度合いがひどいのでまた行くと「前立腺肥大」の病名をつけられお薬を出される。

2014年1月、大量の血尿が出たので B病院を紹介してもらい精密検査。

そこでB医師より「癌」がある事をあっさりと告知される。

しかし「(初期癌)であるため抗がん剤と手術で根治が可能なので悲観しないように」と告げられる。

 

2日後…病理検査の結果、B医師から 「初期ではない。膀胱全摘しないといけないかもしれない。」

「筋層まで達していれば膀胱全摘、達していなければ膀胱を残す事ができる」と告げられる。

 

この差は大きい。

 

お腹に袋をつけて尿を外に出すか、 今まで通りの排尿が出来るのか。 数日後、細かい検査結果が出た、 という事でA医師から「さっきB先生から聞いたんだが、チャンピオン!浸潤してなかったって!よかった。よかったね~」と電話があった。

その言葉に竹原さんは天にも昇るほど嬉しくて舞い上がって、奥さんにもその事を伝えて2人でよかった~って泣いて喜んだ。

が、その2日後…B先生の病院に結果を聞きに行くと、 「A先生から第一報が入ってるかもしれないんだが、今朝もう一度いろいろ確認してみた。そしたらやっぱり浸潤しているようで。

出来るだけ早く治療をしたほうがいい。

まず抗がん剤。そして膀胱全摘手術を。」と言われた。

 

すかさず奥様が「サードオピニオンを取りたいです。」と違うお医者さんの意見を聞く体制をとる。

 

そしてC病院へ。

そこでも膀胱全摘手術は免れない。

何もしなかったら余命最悪1年…と告げられる。

そしてまたもやA先生から電話、 「リンパ節転移が見つかった。」 そしてD病院へ。

結果、竹原さんはD病院(東大病院)で治療をする事になったのですが、 竹原さんが驚いていたのは、 A病院~D病院まで4つの病院の先生の意見が違う事。

 

意見が違うというのは同じ検査データを見ても各々の先生の見立てが違うという事。

 

行く場所場所で言われるステージが変わり、そうすると治療方法も変わり、 余命も変わる。

同じものを見ても、お医者さんによって違う答えが出るんですね。

これは竹原さんだけではなくて、すべての患者さんが感じてる事かもしれません。

この病院では「手術が出来る」と言われたが、違う病院では「手術するのは難しい」と言われる。

そんなことを経験されたことのある方もいるかもしれません。

 

自分がどうしたいのか!?(家族がどうしたいのか!?) をしっかり考える。

 

相談することがとっても大切なことになってきます。

そのためにはメリット、デメリットをしっかり知る事。 手術すると再発率はグッと落ちるけど、年齢的に術後の体力の低下が心配。 抗がん剤したほうが治癒率は上がるけど、副作用で苦しみながら長生きするのは嫌。

など、その人の価値観、死生観を踏まえた上での決断になるので、答えはひとつじゃないな。と思います。

 

ちなみに竹原さんは膀胱全摘をする決断をして、 症例数の多く安全性の高いストーマ(お腹に袋をつけて排出する)にするか、 自分の小腸をとって、それを使って新しい膀胱を作る新膀胱にするか、を迷ったそうです。

 

新膀胱は元の膀胱の位置に埋め込むので見た目は全くわからないが、症例数が少ないのと、尿意がないので夜でも2時間おきに起きてトイレに行かないと、腎盂炎など感染症を起こしやすくなる。というメリットデメリットがある。

結局は新膀胱を選択して 今3年が経つそうです。

竹原さんは自分が これからどういう生活をしたいか!?を考えて決断をしたんでしょうね。

そして竹原さんから学ぶもう一つの事は、 お医者さんに遠慮せずに『いろんな先生の意見を聞く事』です。

 

日本人の特性でしょうね。

セカンドオピニオンの印象は、 「せっかく丁寧に診てもらった先生の事信じてないみたいで悪い気がする…」だったりします。

 

そんな事ありませんからね。

 

竹原さんはセカンド、サード、フォースオピニオンまでうけてます。

そこまで受ける気力体力は大変だと思います。

でも 『色んな先生の意見を聞く』事、 そしてその中で 『自分がどうしたいのか!?』を考える事が大切だと思いますね。

その為には どういう方法があるのか? メリットデメリットは!? を知る必要があります。

私たちも分かる範囲でお伝え出来る事があるかもしれません。

高齢者のがん治療

2019年1月7日

先日、愛媛新聞に「高齢者のがん治療」についての記事が一面に出ておりました。

同じ日の健康面にも同じテーマで書かれており、医療機関でもこの「高齢者のがん治療」についてが、大きなテーマとなっているのでしょう。

というのも、 「現代のがん治療ガイドラインで定められてる治療を、高齢者に当てはめるのは、 あまりにも強すぎる。」 からなんですね。

50歳の方へのがん治療と、 90歳の方へのがん治療が、 同じなわけにはいかないんです。

それは、治療に耐え凌ぐ「体力」。

治療後の傷ついた体の「回復力」。

治療によって免疫が落ちて他の感染症にならないようにする「抵抗力」。

この3つの力が全然違うからなんです。

 

がん治療で絶対に考えないといけないのが、その後の「生活の質」です。

医療機関でも、治療後のダメージが少なくなるようにあらゆる方法が進化しています。

手術の場合も、少し前までは小さい がんでも開腹(メスでお腹を開いて手術)するのが当たり前でしたが、 今では内視鏡(小さく切ってカメラを見ながら手術をする)が主流になっています。

この進化の一番の目的は 術後の「生活の質」を落とさないようにするため!です。 開腹と内視鏡では術後のダメージが全然違うのです。 すると回復のスピードも違い「生活の質」をあまり落とさずに済みます。

 

「がんを攻撃する治療」と 「患者さんの生活を守る方法」、 このバランスが、患者さんにとってベストな時に「良い治療」と言えるのかもしれませんね。

 

自然薬ができるのは「患者さんの生活を守る方法」の方です。

「体力」、「回復力」、「抵抗力」を底上げすることです。 医療機関はどうしても「がんを攻撃する治療」に重きを置いてるように思います。 というよりも、がんを小さくしたり取ってしまおうとすると、攻撃せざるを得ません。

もちろん両者大切です。

 

攻めと守り、 バランスをとって、本人にとっての 「良い治療」となるようにしたいですね。

『検査なんか嫌いだ』著 鎌田實

2018年12月7日

医学の進歩による「早期発見・早期治療」によって「ガンは慢性病である」という考え方が定着しつつあります。

なので「早期発見の為の検診をしっかり受けましょう!」というのが多くのお医者さんの訴える事であり、地方自治体も積極的に検診を受けるように取り組んでますよね。

 

先日、諏訪中央病院の鎌田實先生の『検査なんか嫌いだ』 という本を読みました。

鎌田先生は検査嫌いの お医者さんなんです。

痛い。怖い。恥ずかしい。面倒くさい。 確かにそうですよね… 「頭ではわかってる…でも…」 私は、そんな患者の心情を理解してくれる鎌田先生の人間臭いところが好きなんです。

 

鎌田先生も確かに検診は大切だと言っています。

ただ、「どの検診が必要かは人それぞれ違う」と言います。

例えば親族に大腸ガンをやった事がある人がいるならば、 自分も大腸ガンに なる可能性が、他の 人よりも高いので 検診を受けた方がいいでしょうと。

しかも大腸ガン検診は、まずは「検便」(小学校の時にちょっと恥ずかしいなと思いながら学校に持っていたあれです)、 その次は「内視鏡検査」です。

放射線の被曝の心配もないし、血縁に大腸ガンがいる人は、その年齢より10歳若い年齢の時から2年に1度、大腸内視鏡検査をする事を勧めてい ます。

 

乳がんも同じです。

 

親族に、乳ガンをやった事のある人がいるならば、リスクが上がりますので、乳がん検診を受ける事を進めています。

ただ、若い女性が乳がん検診を受ける際は、マンモグラフィー(透明な板で乳房を挟んでエックス線を当てて撮影する事で乳がんを見つける)では難しいようです。

20~40歳ぐらいの女性は乳腺が発達してるためにガンを発見するのが難しいと言われています。

ガンも乳腺も白く映るので 「雪山で白いウサギを 見つけるようなもの」 と言われます。

特にアジアの女性の80%は乳腺が密集しているので余計に見つかりにくいとされています。

要は20~40歳ぐらいの女性は、マンモグラフィーの検診だけでがんを見つけるのは相当難しいので、エコー検査をするか、エコー検査とマンモグラフィーを一緒に行うのがいいでしょうね。

エコー検査は妊娠中に赤ちゃんを見る検査と同じですので、放射線の心配はいりません。

このように年齢や家庭環境によってもお勧めできる検診方法が変わってきます。

親族にガンの方がいる方とそうでない方ではガン検診の持つ価値も変わってくるし、 生活習慣、年齢、自分が弱いな~と思ってる臓器、体質、性格… いろんな要素が人それぞれ違います。

 

「放射線の被爆は気になるけど、検査してもらわないと心配ばかりしてしまって夜も眠れない。気になってしょうがない。」というような、「心の健康の為に」検診を受ける方だっていると思います。

 

価値観も性格も体質も皆んな違うので、どれが正解というわけではないと思います。

私は「早期に発見すれば治る可能性の高いがんを見逃して、命を落とすのはもったいない。」と思っています。

痛くない検査や、放射線の心配が少ない検査や、自分のリスクの高いがんの検査は、受けた方がいい物もあるんじゃないかな。と。

年末年始は、親族で集まる機会も増えると思います。 その時に親族の健康状態を聞いてみるのもいいのではないでしょうか。

「実は、ばあちゃん20年前に乳ガンやってるんよ」とか、 「亡くなったじいさんは生前大腸ガンだってね~」とか、 そういう事を聞いて、

「そうか!うちの家系は大腸ガンには気をつけないかんのやな!」

「じゃあ肉食中心の今の食事は見直さないかんな~!野菜の量増やさないかんな~!」とか、 検査だけでなく予防の面も、より正確にリアルにイメージできるのではないかと思います。